2万TEU型超大型コンテナ船Ever Givenの座礁によって、現地時間3月23日の朝から閉鎖されていたスエズ運河は、同船が離礁に成功した(写真)ため同3月29日夕に6日半ぶりに通航を再開した。
8〜10隻のタグボートによる牽引と、船首周辺の大量の土砂を取り除く作業によって、閉鎖が数週間に長引く事態は回避された。
とはいえ、再開まで予想以上に時間を費やしたため、スエズ通航を諦めてアフリカ大陸南端の喜望峰回りルートを検討する船社の動きも伝えられた。
運河庁の発表では、今回のスエズ閉鎖で運河内および入り口周辺で足止めされた船舶は422隻にのぼったため、滞船が解消して正常化するまでには通航再開から3〜4日を要するとしている。
全長400m、全幅59mの超大型船がちょっと斜めになれば、幅300mしかない運河の狭隘な部分を塞いでしまうのは、考えれば当たりまえのことだが、はたして関係者はそうした事故が起こり得る危険性を十分に認識していたのだろうか。
中国から貨物を満載して欧州へ向かっていたEver Givenは見るからに重たそうで、なかなか離礁できなかったのはもっともだと思わせる。
それでなくても新型コロナの影響を受けて、世界中で物流が目詰まりを起こしている状況下、スエズ運河の閉鎖が長引けば、グローバル物流へのダメージは想像を超えたものになっていただろう。
スエズ運河は2014年8月から1年をかけて、約1兆円を投じた大規模な拡幅・浚渫が行われた。すでに当時から2万TEU級の大型コンテナ船は通航していたが、現在では超大型船の通航隻数は比べものにならないほど増えている。
今回の事故原因については、砂嵐による視界不良や、強風で船がコントロールを失ったなど諸説あるが、真相はまだ解明されていない。ただ、大型船の通航が飛躍的に増えたことで、スエズ運河内での事故発生の確率が高まっていることは確かだろう。
