EU(欧州連合)のGHG(温室効果ガス)排出量取引制度“EU-ETS”の海運セクターへの適用が来24年1月に迫る中、欧州港湾協会(ESPO)はこのほど、同制度によりEU域外港へ貨物が流出する懸念があると表明した。
EU-ETSではEU/EEA(欧州経済領域)域内港湾で貨物や旅客を積み下ろしする5000総トン以上の船舶を対象に、EU域内と域外間を航海する場合は排出量の50%、EU域内を航海する場合は100%の排出枠を購入する必要がある。
ESPOは海運セクターの脱炭素化を推進する手段としてEU-ETSの支持を改めて表明する一方で、「EUに限定した制度で適用対象が狭すぎ、コスト削減のため航路を変更したり、EU近隣国の港を選び適用を免れようとしたりする船舶が出る」と指摘した。
また、「現行法ではたとえEU域外港での積みが特別制度の対象となっているとしても、船舶にとってはEU港よりも非EU港に寄港する方が依然として有利」との見解を示している。
欧州委員会(EC)は現在、EU港回避を防ぐため、EU隣接港での「積み替え条項」の対象となる非EU近隣港リストについて協議を進めている。
ESPOは、ETS適用対象として候補に挙がっているEU近隣港モロッコTanger、エジプトEast Port Saidについては同意を表明する一方、「EU近隣港で積み替え比率65%に達している港湾は少ないが、多くの港湾が積み替え能力があるか、または現在構築中であるため、規制は比率だけでなく積み替え能力も考慮すべき」と主張した。
また、近年は主要船社によるEU近隣での港湾やターミナル開発・拡張への投資が増加しており、EU域外への航路変更も準備中か、すでに始まっていると指摘した。これに対し、多くの欧州港は懸念を強めていると強調、「一度EU域外の港湾を選択し、貿易ルートが確立してしまえば、それを覆すのは困難になる」としたうえで、欧州は積み替え能力と雇用、サプライチェーン全体の監視・制御を失うリスクがあると訴えた。
ESPOは「国際的なルール形成に向けてECとの継続的な対話を期待する」としている。