昨年末、紅海南部でイエメンのフーシ派からの商船への攻撃が悪化したことにより、MSC/Maersk/CMA CGM/ONE/Evergreen/Hapag-Lloyd/OOCL/Wan Haiなど主要コンテナ船社が、スエズ運河経由および紅海区域における船舶の航行を一時的に取りやめ、喜望峰経由への航路変更を余儀なくされた。
アジア〜欧州・地中海航路を紅海・スエズ運河経由から喜望峰経由に切り替えると、輸送日数は片道で10〜15日、往復では3〜4週間延びると見込まれている。その結果、輸送コスト増加とスケジュール遅延が発生、欧州・地中海向けの運賃も高騰した。
上海航運交易所の発表(昨年12月22日)によれば、上海発・北欧州向けのコンテナ運賃指数(SCFI)は前週比45.5%増の1497ドル/TEU、地中海向けが同30.9%増の2054ドル/TEUと急騰している。
運賃の上昇機運が高まる中、コンテナ船各社は喜望峰経由へのルート変更による長期航海に伴う経費、保険、警備面におけるコストの上昇を補填するための追加料金(サーチャージ)の導入を発表している。
こうしたチャージや運賃上昇の傾向に対して米連邦海事委員会(FMC)は、「運賃の値上げや追加のサーチャージの適用などについて監視を続ける」との声明を出した。FMCは「これらの料金は厳格な法的要件を満たさなければならない。船社間の競争は停止してはならず、船社や船舶共有契約の当事者は、海運法、その他の米国の競争法、およびその他すべての適用法を順守し続けなければならない」との考えを示している。
このような状況の中、昨年12月中旬、米国政府は紅海を航行する商船を保護するための多国間安全保障イニシアチブ「Operation Prosperity Guardian」(OPG)を編成、国際的な枠組みで協調し、紅海航行の安全確保を図ることを発表した。
このOPG始動を受けてMaerskが、紅海の通航を再開する準備を進めていると明らかにした。同社は「安全対策を講じる中でも現段階では同海域での全体的なリスクは排除されていない。従業員の安全確保が最重要かつ最優先事項」と強調している。このほか、23年12月28日時点で、一部のコンテナ船が護衛を受けながら紅海航行を継続しているもよう。
喜望峰への迂回が長期化するかはフーシ派の動向次第で、不透明な状況だが、仮に紅海の通航が再開されたとしても、正常化までには一定の時間がかかる見込みで、しばらくは混乱が続く可能性がある。