日本郵船は先月の7月5日、フィリピン現地企業と共同運営する商船大学「NYK—TDGマリタイムアカデミー」の第13期卒業式典をManila郊外にある同校で開催した。
今回の卒業生95人も今後、船員としての資格を取得し、郵船グループの運航船で航海士や機関士として活躍することになろう。同校は4年制商船大学として2007年に開校、累計卒業者数は1551人に到達した。
郵船のみならず、川崎汽船もフィリピンで30年以上も前から船員や海技者の育成に取り組んできたほか、商船三井も比企業と共同運営中の商船大学「MOL Magsaysay Maritime Academy」において、今年2月に第1回の卒業生を国際海運業界に送り出している。
実は、世界の海運はフィリピンによって支えられていると言っても過言ではない。資料によると、世界の商船に乗り込んでいる船員はざっと165万人ほどとされている。うち約半分が船長や機関長、航海士、機関士で占められ、あとは甲板員や機関員などの部員になるわけだが、その世界の船員165万人のうち25〜30%がフィリピン人によって占められているという。
だが、これは貨物船に限っての話で、客船も含むと比国人従業員の数はもっと増える。客船では船員だけでなく、客室整備・清掃や厨房員、エンターテインメントや事務・財務などのサービススタッフが欠かせない。それらの職種でも比国出身者が多くを占めるからだ。
フィリピンでは英語が実質的な公用語のため、みな英語を話すし、性格は勤勉、実直でおおらか。記者も外航大型客船に乗った際、出会った船員や船室の清掃担当、レストランのウエイターなどほとんどが比国人で、男女問わずきわめてプロフェッショナル、かつフレンドリーな人々だった。
そういう船員や海上従業員をフィリピンが生み出すことに日本の海運界もひと役買っていることを思うと、やはり同じ業界記者として誇らしい気持ちになる。