仏船社CMA-CGMが運航するコンテナ船が8月3日、紅海の入り口アデン湾を航行中にミサイル攻撃を受けたとの報道があった。幸い大きな損傷はなく、人的被害もないとされている。
今回も、イエメンの武装組織フーシが犯行を明らかにしているが、CMAのインドからドバイ、さらにジブチへと向かう定期航路船がアデン湾を通る際に狙われたもののようだ。
今回攻撃された船はイスラエル籍でも米国籍でもなく、ギリシャ船主のリベリア籍のものだと報道されている。こうなると、傍目から見てフーシ派は、イスラエルとイランその他のイスラム国家との間に最近、緊張が極度に高まった機会に乗じて、イスラエルに代表される西側諸国の船ならすべてを攻撃の対象にして、自らの存在感を世に示そうと、考えがより硬化、激越化しているとしか思えない。
しかし、CMAの船がこの海域で攻撃されたのは、先月に続いて2回目である。少々、危機管理として姿勢が甘くないだろうか。
確かに国際海運は、エッセンシャル・キャリアとしてジブチやエチオピア、ソマリアなどの紛争地域にも生活物資を輸送する社会的責任があるかもしれないが、それでも本船や船員、荷主に託された貨物を危機にさらして良いということにはならないはず。相手は問答無用のテロ組織なのだから、その暴力が及ぶ範囲に無力な民間商船が近づくべきではないと思う。
現実に世界のほとんどの船社はこの海域、すなわちアデン湾から紅海を通り、スエズ運河を経て欧州へ至るルートを避けている。アデン湾から紅海へ抜けるには幅わずか30kmのバブエルマンデブ海峡をいやでも通らねばならず、同海峡やアデン湾はイエメンに潜むテロ組織からは狙い放題とされるからだ。
当然、アジア〜欧州航路の定期船はこの海域を避け、南アフリカの喜望峰迂回のルートに切り替えている。しかし、そのおかげで船社経費は増大し、事実、大手船社Maerskの24年4〜6月期の業績はEBITの利益が40%減となったが、輸送量が増えても喜望峰回りの運航コスト増が響いたとの“泣き”の声明が出たほど。
とは言え、中東情勢の緊迫化は明らか。フーシ派のみならず、ハマス、ヒズボラ、そして大国イランまで対イスラエル絡みで過激な動きに出そうな気配である。
紅海を安全に通航できる日がまた遠のいたようだ。