東南アジア最大のコンテナ物流ハブSingapore港が今春から続く同港コンテナターミナル(CT)群の大混雑の緩和・解消に向けて苦闘を続けている。
Singaporeと言えば、アルファライナーによる調べで昨23年に3901万TEUの海上コンテナを扱った世界第2位のコンテナ港である。その重要な東南アの物流交差点で今春以降、一気に各CTの混雑度合いが増したことによる貨物処理の遅延、寄港船の滞留が発生して世界コンテナ定航業界の大問題となっている。
ことし7月、シンガポール議会で答弁した同国のChee Hong Tat運輸相は、その大混雑・混乱をもたらした理由を大要、次のように述べていた。
1:紅海危機によって亜欧間航路船が喜望峰回りの長距離運航となった結果、S’pore寄港船の90%が本来のスケジュール通りに入ってきていない。しかも、到着する時は一斉にダンゴ状態で入ってくる。
2:S’poreに到着した船は、(長距離で遅れているので)本船回転を維持するためS’pore以遠への運航を取りやめ、以遠貨物までS’poreで降ろしてしまい、以遠へは別のフィーダー船で運ぶことが増えた。
3:そうした船社の動きは寄港船/積み替え貨物の双方を倍増させ、S’poreでの荷役時間を長くし、かつ貨物接続を複雑化させて、各船の停泊時間が延びた。
以上が同国運輸相の見解だが、実はこの大混雑・混乱が発生する前から、同国では“Tuasコンテナ新港”という巨大プロジェクトが進んでおり、2040年の完成時には年間6500万TEUを処理可能なメガCT群が誕生する。
それに向けて旧来の5つのCTはすべてこの巨大新港に集約される予定で、すでにTuas新港の1期、2期CT完成にともなって、いくつかの旧CTが閉鎖されていたところだった。
しかし、この危急のときにはその計画を一部、変更せざるを得なくなったようだ。前出の運輸相によれば、閉鎖した旧CTのうち、KeppelとTanjong Pagarターミナルの一部バースとヤード機能を再開したという。またTuas新港でも7月に次いで10月・12月にも新バースが操業を開始するという。
ただ、同運輸相は議会での声明の中で、「紅海危機が収束しないかぎり、不測の事態はまだつづく」との懸念を吐露した。この巨大ハブの混乱が近隣の東南ア諸港にも飛び火しているのが、なんとも心配だ。