国土交通省は8月27日、2025年度における同省事業予算について総額7兆330億円(前年度予算比18%増)の概算要求を行った。
このうち物流/海事/港湾に関する要求総額は合わせて3450億円となる。内訳は物流分野に209億円、海事関連に99億円、港湾分野に3142億円。
まず、物流分野では、2030年度に向けての政府の中長期計画をふまえ、2024年問題の解決を中心とする物流の大幅革新をめざして、前年度比で60%も増やした予算を計上した。
目指すのは、モーダルシフトなどの物流GX(グリーン・トランスフォーメーション)、自動化や機械化、AI導入などの物流DX(デジタル・トランスフォーメーション)を広め、標準化、データ連携など物流の効率化を進めること。また、商習慣の見直し、荷主や消費者の行動変容も促すことにも取り組んでいくとしている。
海事分野でも前年度比20%増やした99億2600万円を概算要求した。注目すべきは、そのうちの77%相当額の76億9100万円を独立行政法人「海技教育機構(JMETS)」の経費としている点。
独立行政法人についてはこれまで、政府の予算合理化の対象になりやすく、年々削減されてきた経緯がある。しかし、内外航ともに船員の不足が危機的なレベルにまでなっていることから、船員の育成と確保が喫緊の課題となっているため、海事局としてはその養成機関であるJMETSの機能向上を図って、大幅増の予算を獲得したい考えだ。
ほかに「海事産業の競争力強化・生産性向上」では、中国・韓国との競合の中で、今後増加が見込まれるゼロエミッション船・自動運航船などの次世代船舶の建造需要を取り込んでいく必要があり、そのためにもDXによる造船業の生産性向上と、国内生産基盤強化に向けた取り組みを推進していくための予算も要求。
さらに、時代の最大の課題である「海事分野のカーボンニュートラル推進」のための予算も計上した。
一方、土木建設工事を含むため常に最大の予算額を計上する港湾分野では、来期についても今年度予算比で19%増(国費分)となる3142億円を概算要求した。
公共部門の国費では、港湾整備事業に29億1400万円のほか、港湾海岸事業/災害復旧事業など。
また、非公共部門では国際戦略港湾の機能強化に向けた「集貨」、「創貨」、「競争力強化」に引き続き取り組み、関連の実証事業も推進していく費用を計上した。
港湾のGX=カーボンニュートラル実現のために必要な経費、さらに港湾サイバーセキュリティの強化推進費も盛り込んでいる。これは港湾システムへのサイバー攻撃への対応能力を高めていくため。
ちなみに航空分野に関しても、航空の安全・安心の確保、持続可能性と利便性の高い航空サービス実現を目的に85億円を概算要求している。