今夏8月を中心に、日本のあちこちで「トラックが手配できない、モノが計画通りに運べない」という悲鳴が上がるという報道があった。
8月といえば、トラック・ドライバーも順繰りにお盆休みに入るので、稼働台数が減ったせいもあるだろう。ふだんでもギリギリの人員や台数で精一杯の対応をしている陸送会社が多いだけに、ちょっと稼働車が減っただけでも影響が大きく出るということか。
しかし、どうもトラック・ショートの現象は今後、お盆の時期にとどまらなくなりそうだ。トラック運転手の年間残業時間を960時間までと規定する2024年問題が、ここへきて「モノが運べないリスク」を現実化しつつある。その残業時間の上限に、上半期だけでほぼ限度まで達してしまっているドライバーが少なくないと言われているからだ。
つまり、残業時間を“先食い”してしまっているため、最繁忙期の年末には、規定違反をしない限り就労できないトラック運転手が増えるだろうという見方である。
本当にそうなれば、最も貨物が動く年末年始にトラック手当ができない荷主企業が続出することになりはしないか。
さすがに荷主業界も、実際に「トラック手配がつかない、運べない」という24年問題の現実に突き当たった最近は、ようやく尻に火がついて自社、あるいは同業界の物流改革に真剣に取り組みだしている。
もはやトラック会社を叩いて運賃を値下げさせるなど昭和の行動をとる荷主の存在はほぼ聞かないし、長く荷待ちをさせたり、運転手に必要以上の積み下ろし労働を強いたりといった積年の“荷主サマ”意識も、政府のトラックGメンが目を光らせているためか、だいぶ減ったようである(それでもゼロでないところに、長年の商慣行の根深さがある)。
一方、大企業や物流に関して先進的な考えの企業は、すでに物流改革への新段階に入っている。
たとえば、一定地域の工業団地や生産拠点から同じ方向へ輸送する一般貨物を持つ企業同士が、トラックを共同利用して輸送効率を上げるやり方は、いろいろな企業の組み合わせ、貨物の積み合わせによって、頻繁に行われるようになった。
さらに新しい考え方になると、製造業が営業や設計の段階から物流部門を参加させて、納品タイミングの設定どころか、輸送に適した製品サイズまで交渉させるようになった会社もある。以前は単なるコストセンターでしかなかった物流部門が、メーカーの経営そのものに関与してくるのだ。
大手企業がこのように革新的に動くのは、2026年には“特定荷主企業”が指定され、役員クラスの「物流統括管理者」を任命することを義務付けるからだ。物流はもはや企業の末端領域ではないのである。荷主各社は、本年末の配送をどう乗り切りるか。