米国東海岸、メキシコ湾岸などの港湾労働者約8万5000人を代表する国際港湾労働者協会(ILA)と、同地域の36港のターミナル運営者を代表する米国海洋連合(USMX)との労働協約交渉が合意に至らず、現地時間10月1日の午前0時1分、ニューイングランドからテキサスまでの東海岸とメキシコ湾岸の港湾でストライキが実施された。
米東岸港湾でのストは1977年以来、実に47年ぶりとなる。
USMXはスト前日の9月30日、「ストが実施されれば米国経済に多大な損害をもたらすことになる。それを避ける最後の努力として、6年間で約50%の賃金引き上げ、退職金制度における雇用主拠出金の3倍増額、医療オプションの強化、自動化と半自動化に関する現行の契約文言維持、などを含む提案をILAに提示した」と明らかにした。
ILAは同日、「USMXに属する海運会社は、24年に数十億ドルの利益を生み出しているが、USMXはILA港湾労働者に受け入れ難い賃金引き上げを提案している」とし、「公正で適切な契約を求めるILAの要求を拒否することで、新たなマスター契約の和解への道を阻止している」と主張し、ILAはUSMXの提案を拒否した。
ILAのHarold Daggett委員長はストライキはUSMXの責任だと非難し、「我々は必要な限り闘う用意があり、どんなに長くてもストライキを続け、ILA組合員が当然得るべき賃金とターミナルの自動化に対する職域保証を獲得する」との姿勢をみせた。
ストライキの影響を受けるのは、Boston/New York・New Jersey/Philadelphia/Wilmington/Baltimore/Norfolk/Charleston/Savannah/Jacksonville/Tampa/Miami/New Orleans/Mobile/Houstonの14港とされている。
米国の輸入全体の43〜49%、毎月数十億ドルの貿易が、米国東海岸とメキシコ湾の港湾を経由して行われており、経済・物流への影響は甚大なものになる。企業はストのリスクにより出荷のピークシーズンを前倒しするなど対応策をとっているが、全米小売業協会(NFR)はBiden政権に法的権限でストを終わらせるよう求めたとしている。
一方のBiden大統領は、ストライキを終わらせるために連邦政府の権限(タフト・ハートレー法)は使わないと繰り返し述べていて、ILAとUSMXに対し「双方が交渉の席に着き、誠実に公正かつ迅速に交渉する必要がある」と促した。しかし現状、双方の歩み寄りは難しい状況で、大統領選挙が急速に近づく中、ストライキが数週間続くことになれば、政府が交渉介入に動く可能性もある。ストの今後の動向が注目される。