北米東岸・ガルフ港湾の労働組合で構成される国際港湾労働者協会(ILA)と使用者団体の米国海事同盟(USMX)は現地時間の25年1月8日、批准を条件に双方が新たに6年間の労働協約を結ぶことで暫定合意したと発表した。
現行基本協約の期限である1月15日が迫る中、両者は1月7日に労使交渉を再開していた。暫定合意により、懸念されていたストライキは回避された。
両者は共同声明で「今回の合意は、ILAの現在の雇用を保護し、より多くの雇用を生み出す新技術を導入するための枠組みを確立するとともに、米東岸とメキシコ湾岸の港湾を近代化するとともに、サプライチェーンを強固に保つために必要な能力を生み出す」としたうえで、「これは、ILAの雇用を創出し、アメリカの消費者と企業を支援し、アメリカ経済を世界市場の主要拠点として維持する、双方に利益のある合意だ」とコメントしている。
現時点で合意の詳細は公表されていないが、今後はILAの組合員、USMXメンバーの双方で暫定合意を承認するための批准作業に入り、これが終了すれば、向こう6年間にわたる正式な新協定締結となる。
米東岸港湾労使の基本協約は昨24年9月末に期限切れを迎え、ILAは10月1日からストライキを実施したものの、3日後には6年間で賃金62%増という条件で暫定合意した。その際、既存のマスターコントラクトをことし1月15日まで延長し、それまでに残る問題について妥結することになっていたのだが、労使交渉の争点となる「港湾の自動化」を巡り意見が対立し、交渉再開からわずか2日で決裂していた。
交渉が行き詰まる中、昨年12月、米国のトランプ次期大統領が東岸労使問題について、自身のSNSでILAを支持するとともに、港湾作業の自動化に反対する考えを示した。ILAはトランプ氏からの支持をもとに、USMXに自動化・半自動化に関する文言削除を強く要請する方針としていた。
こうした経緯から、スト突入はほぼ確実の見方が多かった中で、コンテナ船各社はストを見込んだ緊急サーチャージ導入を検討する動きが広がっていた。
昨年10月の3日間のストでは、米国のコンテナ取扱数量の半分近くに影響が出たとされる。交渉再開の翌日という急転直下の暫定合意となったことで、1年以上続いた米東岸労使交渉が終焉することになった。