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欧州航路のコンテナ船社、スエズ紅海ルートへの復帰に慎重姿勢崩さず
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欧州航路のコンテナ船社、スエズ紅海ルートへの復帰に慎重姿勢崩さず

 エジプトのスエズ運河庁(SCA)は去る11月4日、イスラエルとイスラム組織ハマスとのガザ停戦合意が10月10日に成ったことを受け、「イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海を通る商船への襲撃を停止したこと」、「ポートサイド西側の支流で浚渫工事を終え、通航がより安全性を増したこと」などを理由に、アジア〜欧州航路船社に紅海・スエズ運河経由ルートへの試験的復帰を要請した。

 アジア〜欧州航路でスエズ運河を通る船舶数は、2023年11月に紅海でフーシ派による攻撃が始まる前の1日平均約80隻から、今夏には35隻程度にまで激減していた。紅海を通航してミサイル攻撃に遭うリスクを避けて、ほとんどの船社(特にコンテナ船)が喜望峰経由の遠回りルートに切り替えてしまったからだ。

 しかし、フーシ派による攻撃停止の宣言以降に、仏船社CMA CGMが10月以降、同社コンテナ船のスエズ通航を試験的に行っており、運河庁としては他の大手船社にも同様の試験通航を求めていた。

 そんな中、11月8日にはCMA CGMが今度は24年以降のスエズ通航コンテナ船としては最大となる1万7800TEU型の超大型船を、欧州からアジアへの南航でスエズ運河を通航させるに及んで、スエズ運河庁は「紅海およびスエズ運河における大型コンテナ船の航行再開に向けた前向きな兆候だ」と、喜びの談話を発表した。

 しかし、実は大方の船社の反応は極めて慎重な域をまだ出ていない。その理由はいくつかあるが、まず最大の懸念事項は、ガザ停戦が合意されたとは言え、まだ局面的な騒乱は続いているし、フーシ派も「事態が変われば、いつでも攻撃を再開する」と不気味な態度を示しているからだ。多くの船社が船員・船舶の安全性を最優先にしているため、これは当然の反応であろう。

 また、アジア〜欧州航路という長距離航路で、大手コンソーシアムや提携グループの巨大船隊の運航スケジュールを、現在の主流である喜望峰経由から紅海経由に切り替えることは、そう簡単ではない。少なくとも半年以上は要するだろう。

 しかも、いったん紅海・スエズ経由に戻したところがまた雲行きが変わって紅海周辺がキナ臭くなったら、再び喜望峰に戻す作業には大変な手間と労力、コストを要するから、どうしても慎重にならざるを得ないのだ。

 もうひとつ、現在の喜望峰ルートには距離の短い紅海ルートに比べて多くの隻数を投入している。それらを紅海に戻せば、供給船腹が過剰になることは自明の理だ。船社側の思惑としては、これから来26年のサービス・コントラクト(SC)交渉が始まる前に、需給が軟化してスポット運賃が急落すれば、そうした長期契約運賃も引きずられて落ち込みかねない。こうした事情も紅海・スエズ経由に簡単には戻れない背景を形作っている。

Last Updated : 2025/11/21