韓国が北極海航路の活用に注力、支援策の実施や年内にも試験運航開始へ
韓国が北極海航路の開拓を推進している。韓国海洋水産部は「北極海航路時代」を見据え、北極航路推進本部を新たに発足させた。
アジア〜欧州航路は現在、紅海ルートのリスクを考えて喜望峰経由で航行されているため、リードタイムが長期化している。そうした中で、北極海航路は東アジアと欧州を最短距離で結ぶ航路として注目されているところ。北東アジアから北欧州へ向かう場合、北極海経由なら、スエズ運河経由の航路と比べ、航行距離が約32%短縮され、所要時間も40%以上短くなる見通しだ。
近年、地球温暖化の影響で北極圏の海氷面積が急激に縮小している。北極海航路は夏期のみ航行が可能だが(ロシアの許可が必要)、 今後、海氷減退が長期的に継続し、同航路区間の夏の無氷期間が拡大し、冬でも海氷が1年氷(夏期にはすべて溶融する)だけになる可能性もある。そうなれば、航行期間は通年に拡大し、同航路の利用機会は大きく増える。
北極海航路はエネルギーやバルク関係での利用が多く、コンテナ輸送については一部船社がトライアル輸送を実施していたが、運航期間/輸送コスト/環境問題などの課題もあり、本格的な商業利用には至っていなかった。そうした中で昨25年9月、中国系海運会社Sea Legend Shippingが世界で初めて、北極海を経由してアジアと欧州を結ぶ直航コンテナ定期航路を開始し、北極海航路の新たな第一歩を踏み出した。
こうした状況の中、韓国政府も北極航路活用に向けて取り組みを加速させる方針で、年内には国内船社のコンテナ船を利用して、釜山からオランダRotterdamまでを北極海を経由した試験運航を行う計画としている。
また、北極海航路を運航する船社を支援するため、砕氷船などを建造する場合、最大110億ウォン(約760万ドル)を支援するほか、港湾施設の使用料減免などのインセンティブも提供する。また、2030年までに砕氷船の建造技術の開発や、極地航行を担う専門人材である極地海技士の育成も進めるとしている。
中国、韓国が北極海航路の活用に本腰を入れる一方で、MSCやCMA CGM、Hapag-Lloydなどの欧州船社らはロシアを巡る地政学リスクの高まりや、地球環境と生物多様性保護の観点から、同航路を使用しない方針を示している。
より短距離でアジアと欧州を結ぶ北極海航路は、物流コストの削減や海上輸送ルートの多様化などに繋がるメリットがある一方で、ロシアの地政学的影響力やインフラの未整備、生態系への影響など多くの課題がある。その点を考慮すると、同航路の利用を安定的に拡大するにはまだ時間がかかると見る向きが多い。
