爆発物検査:厳格化で航空貨物業界の困惑
国際航空輸送における貨物セキュリティの確保と物流円滑化を目的とするノウンシッパー(KS・特定荷主=優良荷主)/レギュレーテッドエージェント(RA・特定航空貨物利用運送事業者など)制度が、本年3月に続き、来2026年からもう一段、厳格化されることで、日本の航空貨物業界はいま、大きな難題を抱えている。
爆発物検査を免除されるKS貨物と異なり、非KS貨物(件数でははるかに多い)については、この25年3月からそれまでパレットなど外装の拭き取り検査だけで済んでいた爆発物検査が「全カートン」についての検査となり、さらに26年1月からはそのカートンの「中身」についても検査することを義務付けられるためである。
この爆発物検査(以下、爆検と略)を実際に行うのはフォワーダーであるRAだが、どのような影響が出たかというと、(1)高額なX線検査装置を導入するための投資、(2)検査作業のための人員の増強と訓練、(3)検査のために荷主に貨物搬入時間を前倒ししてもらう必要があるーなどの問題である。どれも遂行上で多大なコスト増に見舞われる案件だ。特に、成田や羽田、関空など主要空港だけでなく、地方空港でも爆検を行うとなると課題は極めて多い。
非KS貨物荷主にとっても大問題である。まず、爆検の料金が大幅にアップすることは間違いない。これまではユニット単位で適用されていた検査料が、「中身」単位の件数で請求されるようになるからだ。
さらには、検査時間を要するために、荷主は貨物をフォワーダー保安施設や空港上屋へ従来より前倒しで搬入しなければならない。すなわち、現行サプライチェーンに大きなコスト増とリードタイム延長が同時発生してしまう。
RA業者側も、爆検の必要がないKS資格を取るよう中堅・大手の荷主に推奨しているが、RAが認定するKS資格へのクリア課題は、荷主企業の保安体制・設備のレベル、取引先やプライチェーン全体の安全確保など、かなり複雑で、簡単ではないのが現実。
制度厳格化の来年1月まで残り1ヵ月半、多少の移行期間の猶予はあるようだが、業界の悩みは深い。